フラッシャー製作講習会資料
'98.11.28
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フラッシャー回路が待機している時は、OUTにつながるスイッチ(SW)がオフで、LEDは消えています。このときすでにFETはオンの状態になっています。
[1]
SWをオンにすると、LEDに電流が流れ、(ア)に約1.3Vの電圧が生じます。そのためTr1のベースにも電流が流れTr1がオンします。(イ)の電圧は0Vになり、(ウ)の電圧はVDDとなります。R2を通じてC1が充電され、(エ)の電圧が徐々に上がっていきます。
[2]
(エ)の電圧がVTHに達すると、(オ)の電圧が下がり(カ)の電圧が上がります。すると、C1を通して(エ)の電圧が急激に上がり、(オ)の電圧は0V、(カ)の電圧はVDDとなります。このとき、(エ)の電圧は一瞬VDDを越えますが、R3とC-MOSのIC内蔵のクランプダイオードを通して電流が流れ、すぐに電圧はVDDとなります。また、(キ)の電圧は0Vとなり、FETはオフとなります。
[3]
FETがオフのため、LEDに電流は流れず、(ア)の電圧が0V、Tr1のベース電流が0、Tr1がオフします。(イ)の電圧はVDDとなり、(ウ)の電圧は0Vとなります。R2を通じてC1が放電され、(エ)の電圧が徐々に下がっていきます。
[4]
(エ)の電圧がVTHまで下がると、(オ)の電圧が上がり(カ)の電圧が下がります。すると、C1を通して(エ)の電圧が急激に下がり、(オ)の電圧はVDD、(カ)の電圧は0Vとなります。このとき、(エ)の電圧は一瞬0Vより下がりますが、R3とC-MOSのIC内蔵のクランプダイオードを通して電流が流れ、すぐに電圧は0Vになります。また、(キ)の電圧はVDDとなり、FETはオンとなります。
[5]
このとき、LEDに電流が流れ、[1]と同じ動作で(エ)の電圧が徐々に上がっていきます。
以上の繰り返しで、FETはオンオフ動作を繰り返し、LEDが点滅します。
点滅周期は、T(秒)=1.4×C1(μF)×R2(MΩ) です。
・R9とD4について
5V〜10Vの電圧を直接供給できないときには、R9とD4を用いて、10Vの電圧を作ります。R9は、バッテリー電圧が48Vでは33kΩ、24Vでは10kΩとします。
・R8とD3について
オンとオフの時間の比を変えたいときに、R8とD3を取り付けます。これを付けることで全体の周期も変わってしまいます。詳しくは付録の計算式を参照して下さい。
4゜製作上の注意
・静電気に弱い部品
IC(C-MOS)は、回路につながっていないときは静電気で特にこわれやすいので、アルミ箔や静電防止袋で保管します。作業の時は静電気を逃がしながら作業します。FETは少しは丈夫ですが静電気に注意した方がいいです。
・極性、向きのある部品
ダイオード、LED、トランジスタ、FET、電解コンデンサー(C3、長い方が+)には極性があります。
IC、ICソケット、ニチアツ端子には向きがあります。
抵抗とコンデンサー(C1,C2,C4)には極性はありません。
・半田付け
半田ごては、半田クリーナー(耐熱スポンジに水を浸したもの、なければ濡れ雑巾で代用可)で、時々こて先の汚れを落としながら作業します。
プリント基板の半田付けしようとする場所に半田ごてを当て、それから(1秒くらい後に)ヤニ入り半田を当てると半田がきれいに流れて良い半田付けができます。
半田を一度こて先にのせてから付けるところに持っていく方法では、半田のヤニがこて先で焼けてなくなってしまうので、良い半田付けはできません。
5゜製作
・フラッシャー回路基板の作製
基板には部品配置の印刷がありませんので、最初に目印となるICソケットを取り付けると良いでしょう。向きがあるので注意します。
その後は、背の低い部品から順に取り付けます。抵抗、ダイオード*、C4、C2、C3*、トランジスタTr1*、ニチアツの端子*、FET*の順に半田付けしていきます。(*は極性に注意) 部品の向きは図2を参照してください。
標準のキットでは、D3とR8はありません。また、R9とD4は必要な場合に取り付けます。
部品の半田付けができたら、テスト用のリード線を取り付けます。最後に、静電気に注意しながらICを取り付けます。
・発光モジュール部の作製(講習会では省略します)
LEDは比較的熱に弱いので、1箇所あたりなるべく10秒以内で半田付けします。
トランジスタTr2は最大1W近くの発熱がありますので、放熱できるよう周囲を空けておきます。
6゜動作テスト
表示モジュールは、電源につないで発光と電流値を確認します。また、電源電圧を変えても明るさや電流値がほぼ一定であることと、最小バッテリー電圧にしても発光することを確認します。
つぎに、フラッシャー回路に表示モジュールとスイッチを接続し、電源をつなぎます。OUTのスイッチがオフの時、フラッシャーにはほとんど電流が流れていないことを確認します。次に、スイッチをオンして、LEDが点滅することを確認
します。フラッシャーが動作時の電流が1mA以下、待機時の電流が1μA以下であることを確認します。
7゜使用上の注意
バッテリーに接続する配線には安全のため必ずヒューズを入れて下さい。また、フラッシャー回路は内部のインピーダンスが高いのでケースに入れるなどの防水対策をして下さい。また、電源の極性を間違えると、ICとD4がすぐに壊れてしまいます。
問い合わせ先: 鹿野文久 kano@oyama-ct.ac.jp 河西勇二 kasai@etl.go.jp
表1 LEDの特性の例
超高輝度型、径5φ、標準半値角(2θ・1/2)20度以上のもの。
発光色 型名 輝度 最大電流値
赤 GL−5UR3K 3000mcd
赤(無透) TLRH157P 1800mcd 50mA
赤(無透) TLSH157P 2300mcd 50mA
橙 GL−5HJ43 3000mcd
橙(無透) TL0H157P 2000mcd 50mA
黄(無透) TLYH157P 2300mcd 50mA
[付録]点滅周期のやや厳密な計算
T=Ton+Toff
Ton=C×R×ln((VDD+VF)/VTH)≒0.7×C×R
lnは自然対数、VFは、IC内蔵のクランプダイオードの順電圧(0.6V)
C=C1
R=R2 (R8がない場合、または、D3が図面と同じ向きの場合)
R=R2×R8/(R2+R8) (R8があり、かつ、D3が図面と逆の向きの場合)
Toff=C×R×ln((VDD+VF)/(VDD−VTH))≒0.7×C×R
C=C1
R=R2 (R8がない場合、または、D3が図面と逆の向きの場合)
R=R2×R8/(R2+R8) (R8があり、かつ、D3が図面と同じ向きの場合)